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2012年9月18日 (火)

ピアノと電子音による小協奏曲

この作品は、既にいろいろと書いてきましたように、ピアノの即興演奏を録音したテープを土台にし、それに電子音を被せながら編集のテクニックを駆使して製作した作品です。構想自体は前の作品(「電子音楽によるファンタジー」)を作っている時、既に「次の曲は・・」と考えていて、即興演奏の練習自体は断続的に続けていました。キース・ジャレットのソロ・コンサート・シリーズ、特に全世界に衝撃を与えた「ケルン・コンサート」を繰り返し聞き、「即興」の本質を体得しようとしました。私の(当時の)ピアノの実力は、まあ平均だったと思います。自慢出来る事があるとすると、高校時代に学校のオーケストラでピアノ協奏曲(ベートーヴェンの1番)を弾いた事と、同じ頃ちょっとしたリサイタルを(何度か)経験している事くらいでしょう。こういう経験だけは抜きん出ていたかも知れませんが、テクニック的に平均と言うのは、ピアノ科以上の実力者と、全く弾けないに等しい人と、両極端が多い作曲科の中にあっては、一番中途半端な位置と言えると思います。当然ながら即興の練習の経験は無く、この時に本当にゼロからスタートした事になります。「よし、録音しよう」という気持ちが高まるまで、半年くらいの期間を要しました。本題から外れますが、この練習のお陰で、それまで平均(中途半端)だった私のピアノの実力がはっきりと伸びたと感じています。ポイントは、どんなピアニストにも絶対に負けない長所、具体的には手の大きさと柔軟性(13度を同時に弾けます)なのですが、それをはっきりと自分で認識した事と、録音に対する集中力(コンサート以上だと思います)を育てる方法を学んだ点です。この経験が後のピアニストとしての活動の原点になっていると思います。詳しい事につきましては別に書く機会があるでしょう。

ピアノの録音は、テープを回しっぱなしにして、1本分録り切るという形でした。今、その元のテープが何処にあるのかわからなくて確認できないのですが、最後はテープが先に終ったために尻切れトンボになっていたように思います。しかし、時計を見ていて頃合を見計らって収束させたかも知れません。製作はその録音を連続して用いるのではなく、その中から3つのパートを抜き出して使っています。

電子音の方は、ブックラーのシンセサイザーを用いています。ブックラーと言うのは、あまり馴染みが無いと思います。私自身、この芸大に置いてある一台以外には、見た事がありません。また、その一台がどんな型番の機種なのかも判りません。写真があると良いのですが、それもありません。記憶を手繰ってみると、どうもモジュールを注文者の好みで組み合わせる事が出来るオーダー・メイド感覚のシンセサイザーのような気がします。VCO(ヴォルテージ・コントロール・オッシレーター、つまり基本的な発振装置)はかなりの数がありました。他にノイズ系専用、低周波用のオッシレーターもありました。VCOそのものは、音色を切り替えるスイッチ、基本の音高を決めるツマミ、最低限の入出力を備えたオーソドックスなタイプです。一番特徴的な事は、鍵盤装置が無い事で、その代りになるものとして、アナログ・シーケンサー、タッチボード、リボン・コントローラーがありました。その中でタッチボードが一番鍵盤の雰囲気に近いのですが、それぞれのタッチ・センサーに対応する音高を自分でセット出来ますので、変な音列にしたり、微分音にしたりといろいろな手法を使っています。アナログ・シーケンサーは、自動演奏も使っていますが、手動でクリックを送って、リズムのあるフレーズを形成させたりという手法も用いています。又、電子音の中に混じって、ピアノの録音を逆回しにして回転を落としている音源も使っています。総じて、電子音自体は実際のオーケストラの手法を参考にして作られています。

曲全体は4つの部分があり、最初に電子音による導入部、その後ピアノの3つの部分を用いたパートが順に登場します。通して30分を超える、息の長い作品に仕上がっています。

この作品は、「福田陽電子音楽作品集」というCDに収録されています。ご興味のある方は、Studio MASQUE CD-Shopのページをご覧下さい。

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