Fantastic Arrival / Space Circus
それでは、何が伝説なのかと言いますと、1にも2にも超絶プレイを前面に打ち出した、それこそサーカスなみのバンド・アンサンブルに尽きます。その大部分を一人で担っていたのが、ベース奏者の岡野一だったという事は衆目の一致するところでしょう。彼のプレイの凄さは、それを実際に見聞きした人でないとなかなかわからないものですが、当時はまだ珍しかったチョッパー奏法をいち早く取り入れただけでなく、それを脅威の早弾きで披露したり、重音奏法やスリー・フィンガー奏法、ライトハンド奏法などありとあらゆるテクニックを駆使し、常識では考えられない決めのフレーズをこれでもかと繰り出しながら駆け回る様は、聞く人全員を打ちのめしてしまったと言っても過言ではないでしょう。その当時ではもちろん、現在でも彼を世界一のベーシストとして押す声は数多くあると思います。
そういう意味のインパクトならば、ファースト・アルバムの方が目立っていると思いますが、ファーストの場合はどうしても音楽性の統一感が感じられなく、音楽的には寄せ集めの支離滅裂としか呼びようがありません。また、ファーストの弱点はキーボード奏者のテクニックが、他の3人に見合っていないという点もありました。ただ、バンドを最初に結成したのも、当初曲作りにおいてイニシアティブを持っていたのもそのキーボード奏者でしたので、その辺がかなり重要な問題でした。
セカンド・アルバムでは、そのキーボード奏者が交代して、ゲスト扱いですが豊田貴志が加わっています。豊田の場合はシンセサイザーを得意としたマルチ・キーボーディストで、ヴァイオリンも操りますので、バンド・サウンドをまとめるのに多大の貢献をしています。結果としてシンフォニックな味を持ったプログレ・サウンドを披露しています。曲によってはスティーブ・ハケットのソロ・アルバムを聞いているような錯覚を覚えたり、ある時期のキャメルのような感じに聞こえたり、ラテン系の味を持った曲は、サンタナかアル・ディメオラの曲のような味わいを持ったりしています。
さて、残る2人ですが、ギタリストの佐野行直は、スタンド・プレイに走らないのが特徴(?)のオール・ラウンド・プレイヤーで、曲によって本当に様々の表情を見せてくれます。ドラムスの小川宜一は、ジャズっ気の全く無いロック・ドラマーなのが目を引きます。タイプとしては、サイモン・フィリップスあたりが近いでしょう。
ジャケットのデザインは、ある天体上で宇宙服を着た4人の人物が何者かに攻撃を受けて炎上しているというもので、明らかに酸素が存在していなさそうな空間でどうやって炎上するのかという事を考えるとかなり怖いんですが、それはともかくとして、何らかのストーリー性を感じさせるものです。そのストーリー性は曲名にも反映されていて、その意味ではコンセプト・アルバムと呼んでも良いでしょう。ただし、全曲インストルメンタルで、ヴォーカル曲は収録されていませんので、コンセプトと言ってもそのタイトルだけのものになります。
このアルバムは、曲名のところに表示された演奏時間が明らかに入れ替わっています。こういう場合は、表示された数字だけが間違っているのか、曲そのものの順番が入れ替わっているのかを検証しなければなりません。歌詞が無いだけでなく、曲名と作者名程度の情報しかないので、かなり迷いましたが、時間表示の数字が間違っているだけだろうという結論に達しました。
先にこのアルバムがラスト・アルバムと書きました。ゲストとして参加したキーボードの豊田が、最初からそういう約束だったのか、それとも他に問題があったのかは不明ですが、レコーディングだけでバンドを離れてしまい、その穴を埋める人材が見出せないまま解散に至ってしまったという結末になります。残念な事だったと思わざるを得ません。
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