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2009/01/08

Arbeit Machr Frei / Area

Area1 どうしてもインターナショナルには見えないインターナショナル・ポピュラー・グループです。最初から何を書いているのかわからなくなりそうですね。これは実際問題言葉の綾にしか過ぎない事です。つまり、アレアはインターナショナル・ホピュラー・グループと自称して、1973年にこのアルバムで登場してきたわけですが、少なくとも日本人がイメージするインターナショナルという言葉とは違っているようです。私たちが普通使っているシンターナショナルは、世界的に通用するグローバルな存在という意味合いが強く感じられるはずですが、そういう感じには見えません。

ここで言うところの、つまり彼らがイメージするところのインターナショナルは、世界中のいろいろなものが混在しているという意味で、その1つ1つを見てみますと必ずしもグローバルとは言い難いものが多いようです。音楽的には地中海音楽と括られてしまいますが、つまり地中海上の海上交通によって伝えられ影響され合っていた一連の音楽の総称的な意味があります。シチリア島をはじめとした南イタリア地方や、スペイン、ギリシア、トルコ等の音楽の集合体のようなイメージがあります。メンバーの国籍がいろいろである、という意味もあるでしょう。ミラノで活動していましたので、イタリアのバンドという分類にはなりますが、リーダー格のデメトリオ・ストラトスは、エジプト生まれのギリシャ人ですし、メンバーの名前と写真で見る限り本物のアラブ系のメンバーも入っています(よくある、偽アラブ人が洒落で出てくるケースとは大違いです)。だいたい、アルバムのタイトルはドイツ語で、しかもあのアウシュビッツの収容施設の入口に掲げられていたスローガンです。意味としては「仕事をすれば自由になれる」ということで、あまり深く考えようともせずに文字面に賛同する人が(当時のイタリアの特に貧困層には)少なくなかったようですが、そんなお目出度い意味ではない事は周知の事実であるわけで、この事一つ取っても、このバンドが一筋縄ではいかないスタイルを備えている事が垣間見えます。第一ジャケットのデザインが一見して異常で、奴隷とも囚人とも見えるほとんどグロテスクな人形の連続写真は、悲痛なメッセージを懸命に発信しているようでもあります。奴隷か囚人かと書きましたが、古代には囚人が奴隷だった時代がありますので、象徴的な意味としての人形をどちらなのか区別して考える必要は無いかも知れません。

イタリア国内での話はともかく、「アレアという凄いバンドがいる」という情報はミュージシャンや業界関係者の口コミで世界中に広がりました。日本にその名が伝わったのが、初来日した時のPFMのメンバーの口からだったというのは象徴的な出来事だったでしょう。つまり圧倒的に玄人好みの音楽を作り続けていたバンドという事が出来ます。

それでは、どこが凄いのでしょうか?。社会的なメッセージの強烈さというのは上記の説明で感じ取ってもらえると思いますが、それ以上に強烈なのが音楽そのものなのです。それを言葉で伝えるということは、かなり難しいように感じます。一例として、このアルバムの1曲目「7月、8月、9月(黒)」という曲について書きます。曲は、女性によるアラビア語のナレーションから始まります。そしてオルガンとヴォーカルによる賛美歌のようにも聞こえる導入があり、変拍子の急速な音楽に突入します。変拍子は7拍子を基調としていますが、時々6拍子の小節も挟まれます。インストと歌の部分が交互に現れた後、テンポアップし、そのままリズムと拍子が無くなったフリー・ジャズ・スタイルの即興音楽に移行し、一段落の後新たなメロディがゆっくりと現れ、アッチェランドし、最初の急速な音楽が再現して終わるという形です。これを読んで「凄い」という感想をお持ちの方は、かなりの音楽の知識をお持ちだと思います。変拍子の音楽でアッチェランドしたり、増してフリージャズを取り入れてしまうなんて事が、どんなに大変な事なのかは実際に演奏に携わる人でなければわからない事ではないかと思います。逆に言えば、その大変な事をあまりにもさりげなく平然とやってのけているので、その凄さに気付かない人も多かったということにもなります。アレアが本当に認知されるまでの間、プロのミュージシャンの間で口コミに近い形でその存在が伝播していったのは、ある意味必然だったのでしょう。

むしろ、素人にもわかりやすい凄さは、ヴォーカリスト、ディメトリオ・ストラトスのヴィブラート・テクニックにあります。と言っても、その辺の2流演歌歌手だって当たり前にやっているヴィブラートのどこが凄いのだ、という話になってしまうかも知れませんね。ヴィブラートというのは、音の高さを微妙に、周期的に揺らす唱法ですが、ディメトリオの場合は「微妙」なんてものではなく、勢い余って隣りの音までいってしまうなんてものではなく、10個以上離れた音まで平気で行ったり来たりしてしまうレベルのものです。シンセサイザーなどで機械的にヴィブラートを生成しようとして、うっかりツマミを回しすぎて「こんなヴィブラート、人間業じゃないよね」と言って笑ってしまうような感じのヴィブラートを本当にやってしまっているのですから恐れ入ります。私はそれを「凄い」と表現しましたが、同時に「あの声はどうも苦手だ」という感想を持つ人も複数知っていますので、「凄い」のだから「良い」という図式にはなかなかならない例だという事なのでしょう。

以下は、アレアを良く知らない人に対しての付け足しのようなものです。アレアは、1979年にディメトリオ・ストラトスが白血病で亡くなり、徐々にフェイド・アウトしたバンドですが、その短い活動期間の間、ほとんど全力疾走で駆け抜け、イタリア音楽シーン全体に絶大な影響を与え続けた伝説のバンドです。一般的な人気はともかくとして、(イタリアの)ミュージシャンを対象とした人気投票をしたならば、1位は間違いないのではないかと思います。

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