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2009/07/10

It Is and It Isn't / Gordon Haskell

G_haskell あらゆる意味で不幸なめぐり合わせになってしまったアルバム・・・このアルバムについて一言書こうとするとこういう言い方になります。

このアルバムを実際に手にとって見た人はそれほど多くは無いでしょう。そしてその中のほとんどの人は自分勝手に過大な期待を抱き、実際に聴いてみて自分勝手に期待外れだと判断し、そのまま放置してしまったという形になっているでしょう。自然な結果として、人々の話題にのぼる事も無く、口コミによって新たなリスナーが生まれる事もほとんど期待出来ない状態になっていると思います。

だいたい、ゴードン・ハスケルと聞いて「あ、あの人ね」と直ぐに反応出来る人はそう多くはないように思います。じゃ、無名のアーティストなのかといいますと、それも何か違います。その事からして中途半端ですね。

もったいぶらずに書いていきますが、ゴードン・ハスケルはキング・クリムゾンのヴォーカリストだった人です。ファースト・アルバムのヴォーカルを担当したグレッグ・レイクがELP結成のために脱退した時、後任を務めた人です。これだけ書けば、ほとんどの人が「そうそう、そうだった」と思うでしょう。同時に、ロバート・フリップに声質が合わないという理由でダメだしされてバンドを去った人だ、という事も思い出すのではないでしょうか。このアルバムはその彼がキング・クリムゾン脱退直後の1971年に発表されたソロ・アルバムになります。実はゴードンにとって2枚目のソロ・アルバムになります。1枚目はキング・クリムゾン加入前の作品ですし、その以前はフラー・ダー・リーズというバンドのメンバーとして、何枚かのシングルを発表したりしています。バンドのデビュー・シングルはジミー・ペイジがプロデュースしたという事で、なかなかどうしてかなりのキャリアを持っていた人だと言えます。

さて、そういう彼がバンドを辞めてから直ぐに発表したソロ・アルバムという事で、リスナー側は何事かを期待してしまいます。さらに悪い事に、このアルバムに参加したベース奏者がジョン・ウェットンだという話を知って、さらに期待感を増長させてしまう事になります。で、聞いてみて「期待はずれ」と判断して葬り去っている・・・という流れになっていると思います。

しかし、よくよく考えてみれば、これはリスナーの早とちり以外の何ものでもない事がわかります。ゴードンがキング・クリムゾンに参加した頃の状況は、オリジナル・メンバーが次々と去っていき、グループの存続自体が危うい状態になっていて、何とかしようと悪戦苦闘していたロバート・フリップに、既にソロ・アルバムを出していたなど明らかにキャリア的には格上のゴードンが親切に手を貸してあげたという形だったはずです。皆さんご承知と思いますが、ゴードンがヴォーカリストとして参加したサード・アルバム「リザード」では、B面部分の大曲はゲストのジョン・アンダーソンが歌っています。この扱いにカチンと来たゴードンが手を引いたというのが本当だと思います。ゴードンは自分本来の路線に戻っただけという事になります。ジョン・ウェットンの参加も、ジョンのクリムゾン加入の以前の段階の事で、セッション・マンとして一仕事しただけの話です。しかしながら、このアルバムでのメロディアスなベース・プレイは本当に楽しめます。ただし、それがジョンの独創かどうかとなると何とも言えません。全曲を自作自演しているゴードン自身が元々ベーシストですので、ベース・ラインまで考慮して曲作りがなされているようにも感じます。

アルバム自体の基本的なサウンドは、ゴードンがアコースティック・ギターを弾き語りするスタイルです。つまり、フォーク系のシンガー・ソング・ライターのアルバムの味わいを持っています。同時代の音楽では、声質は違うのですが、ジェイムス・テイラーの作品郡の雰囲気が近いように思います。ちょっと時代がずれるのですが、ダニー・カーワンの最初のソロ・アルバムやアンソニー・フィリップスの初期のアルバム等にもイメージが近い部分があります。曲はそれぞれ、内省的な感じやお伽噺風の詩に乗せて、なかなか味わいの深いメロディを持っています。所々でプログレ的な仕掛けもあります。ふいに、メロトロンが登場したり、曲の途中でテンポを変化させたり・・という感じです。特に「ベニー」という曲では後半でジャグ・バンド風のブラス・サウンドが登場するのですが、その瞬間のゾクゾクとする感じは何度聴いても色褪せる事がありません。

このアルバムを名盤と呼ぶかどうかは多少疑問があり(録音された音質そのものがあまり良くないですね)、好盤という呼び方が相応しいかなと思います。ただし、私の個人的な嗜好では、こんなにベースが楽しめる作品は他に滅多に無く、その意味で特Aクラスのアルバムだと思っています。

このアルバムの不幸は、ゴードンが手を引いたキング・クリムゾンがそのまま消滅したりせずに、ジョン・ウェットンと共に確固たるビッグ・ネイムに躍り出てしまったという、このアルバムの内容とは全く関係の無い話が原因になっています。この言い方に違和感を持たれる方もいらっしゃるかも知れませんが、ジョンの参加以前のクリムゾンは確かに名盤も出していましたが、メンバーも安定せずいつ解散してもおかしくない状態で、つまり一時的に評判を呼んだだけのバンドと後々言われた可能性もあった訳です。たまたまジョンが参加した事も含めて運命の皮肉のようなものを感じます。

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コメント

ハスケル、結構好きですよ。このアルバムでは「Could Be」が個人的にヘビーローテーションです。
最近(と言っても90年代w)のアルバム郡も渋くていいです。この人のインタビューも面白い。フリップの悪口ばっかですww
これから他の記事読ませてもらいます。でわ。

投稿: ここはじめて見ました | 2009/07/27 02:13

コメントありがとうございます。
「Could Be」は確かに聞いているとかなり耳につく曲ですね。第一印象が良い曲なのかと言うと若干違いますので、面白いところです。

投稿: 管理人 | 2009/07/29 20:41

ウェットンが亡くなってしまいましたね。ハスケルとウェットンの友人関係は70年からだったそうです。アルバムを作る前から友人であったからセッションに招かれたのでしょうね。
ブログ内でご指摘のジェームス・テイラーの雰囲気と言う記述に驚きました。ハスケルがウェットンを起用した理由にウェットンのプレイがそれ風だったという発言がありましたもので。

投稿: chop | 2017/02/08 16:51

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