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2009/10/09

Another Green World / Eno

Eno4 名盤のうちに入るでしょう。ただし、どちらかと言うと聞く人を選ぶタイプの作品で、つまり万人向けという感じではありません。又、イーノというアーティストが自己のアイデンティティを確立していく最大の転換点となった作品であるという意味が大きく、作品自体が完成品として優れているという感じはあまりしませんし、到達点でもありません。むしろ未完成品と呼ぶ方が良いかも知れません。それで語弊があるのでしたら、アーティストの思考の変化の過程を知ることの出来る作品と呼ぶ事も出来ると思います。「過程」であるならば当然ながら「完成品」という意味とは違ってくるはずです。

イーノは、このアルバムを境としてアンビエント・ミュージックに足を踏み入れて行く事になります。実際に「アンビエント・ミュージック」という言葉を発していくのは数年後になるのですが、このアルバムが発表された1975年は、ほぼ平行する形でオブスキュアー・レーペルの活動を開始していますので、原点はこのアルバムに落ち着くと思います。

さて、それではいったいどういうきっかけで方向が変化していったのでしょうか?このアルバムはソロとしては3枚目のアルバムで、前2作はほとんどが歌の曲でもありますし、一応はポップスと括れる音楽をやっています。もちろんイーノ独特の捩れ方が随所に見られますので、単純にポップスなどと呼んでしまうと逆に誤解を招くおそれがあります。実はイーノ自身は前作とこの作品の間に交通事故で入院するという出来事があったようです(変な言い方ですみませんが、その事を書いてある記事を読んだ記憶はあるのですが、どこに書いてあるのか見つかりませんでした)。突然の入院という事は、誰の身にも起こる可能性がありますし、入院で人生観が変わったという話はそれなりに聞きます。しかし、それで音楽観が変わってしまったというのは、余程ある種のタイミングが合わなければ起こりえない事なのではないかと思います。まあ、体力や精神力が落ちている時に、あまり暑苦しいと言うか、重苦しいような音楽は聞きたくはないと思ったとしてもそれは理解できます。問題なのは、体が回復し体力・気力が戻れば、聞く音楽も元に戻るのが通常だと思うのですが、イーノの場合は元には戻らなかったという言う事です。これは、イーノ自身がそれまでの2枚のアルバムに対して「これで良かったのだろうか?」という疑問を持っていたとすれば納得できる事だと思います。

1曲目はいきなりイーノ自身の弾く冷徹な印象のギター・サウンドが鳴り響きます。このギター音は、あまりにも過剰にエフェクトがかかっていてシンセサイザーのような印象でクレジットで確認しなければギターとは思わなかったでしょう。そのギターのフレーズに絡んでハイ・ハット中心の妙なドラム、変に動き回るフレットレス・ベース、単純なコードを鳴らすエレピというスカスカのバンド・サウンドが流れます。聞く人の耳はイヤでもベース・ラインに引き込まれてしまいます。このリズム・セクションがフィル・コリンズとパーシー・ジョーンズだと言うのですからただ事ではありません。曲の後半にはジョン・ケールのヴィオラが登場いたします。しかし、こういう今にも崩れそうなスリリングなバンド・サウンドの曲は全体的には最初の2曲のみです。

アルバム全体は14曲の小品集となっています。歌が登場する曲は5曲のみ、イーノが一人で全楽器を担当して録音している曲が7曲含まれています。上記の3人の他には、ロバート・フリップが例の音色やフレーズでギター・ソロを取っている曲が3曲含まれているのが目に付きます。後半に進めば進むほど、いやに落ち着いた静かなサウンドに収束していきます。このアルバムは、デヴッド・ボウイの「ロウ」に大きな影響を与えていると思いますが、この後半の感じははっきりと共通しています。

このアルバムが音楽的に面白い作品であるのかどうかについて、私自身かなり迷っている部分があります。パーシー・ジョーンズがスゴ過ぎるとか、ロバート・フリップが変態だとか言って面白がる事は出来るかもしれませんが、それがメインでは無いでしょう。聞き終わった時にドッと押し寄せてくる倦怠感がイヤになる時もあります。それでも時々聞きたくなるのですから、飽き飽きしているわけでも、忘れ去っているのでもない事になります。「不思議なアルバム」だ、と言っておくことにいたしましょう。

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コメント

obscureから環境音楽のきっかけは
入院中に音楽聴いてたら
ステレオ装置の片側が音が出てなくて
でも身体が不自由で直せなかった
というエピソードがあったそうです

この時期は本作とafter the heatが名作ですね

投稿: 飯野実(仮名) | 2017/11/08 00:50

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