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2012/06/18

Electronic Realizations for Rock Orchestra / Synergy

Synergy1このアルバムはシナジーのファースト・アルバムになります。シナジーというのは一応バンド名の扱いになっていますが、実際はラリー・ファストという人のワンマン・バンド(?)になります。もう少し詳しく書くならば、シンセサイザーのエンジニア・プログラマーとしてそれなりに知られていたラリー・ファストが自身でシンセサイザーを中心としたアルバムを発表する時に特に用いた別名という事になります。という事で、このアルバムは一部メロトロンも使用されていますが、ほぼシンセサイザーのみによる、多重録音の作品になっています。1975年の作品です。

このプログの中で、ラリー・ファストの名前を取り上げたのはネクターの「リサイクルド」に続いて2度目になります。ただし、その他にも彼が参加したアルバムがいくつかあり、正確に数えるのは難しい感じです。その中で重要なものは、イエスの「海洋地形学の物語」だと思います。イエスの作品はこのシナジーのファースト・アルバムの直前、ネクターの作品は直後にあたります。イエスの「海洋地形学・・」はラリー・ファストの名前が音楽関係者に認知されるきっかけとなったアルバムです。彼は単にシンセサイザーのテクニカル・アドヴァイザーとして名を連ねただけで何のプレイもしていないはずですが、シンセサイザーのサウンドが、前作の「危機」に比べて見違えるほどの・・・いや聞き間違えるほどと言うべきでしょうか・・・進化が認められるのは、まさに彼の力によるところが大きいという点は見逃す事が出来ないと思います。

ただ、シナジーのアルバムになりますと・・・・これはシナジーという別名を使ったからという理由が大きいのでしょうが・・・・単なる無名の新人グループのデビュー盤のような扱いにされ、ほとんど話題にも上っていなかったと思います。むしろ、後年ラリー・ファストがピーター・ガブリエルの一連の作品に参加して話題になってから、知られざる名盤のような扱いで徐々に広まっていったというのが実際の印象です。

シンセサイザーを中心としたアルバムというのは、1975年当時それなりに存在していました。ただほとんどの場合、音楽的にはそれほどではなく、評価できるのは富田勲とタンジェリン・ドリームくらいではなかったかと思います。その2者ですが、富田の場合は基本的にはクラシックのアレンジですので、音楽的には同列には論じられません。そして、タンジェリン・ドリームはかなり早くからシンセサイザーを中心のサウンドを確立していましたが、初期は他の楽器も多用していて、ほぼシンセサイザー中心というアルバムが出現するのは1974年に発表された「フェードラ」まで待たなければなりませんので、つまりシナジーのこのアルバムより時代的にちょっとだけ早い程度ということになってしまいます。このことからも、このアルバムの音楽史的重要度がかなり高い事がわかります。そして、シナジーに少しだけ遅れる形でジャン・ミッシェル・ジャールが登場するという流れになります。

このシナジーのアルバムですが、誤解を恐れずに書きますと、「中庸」という言い方が私にはしっくりと来ています。いたずらにテクノロジーに走ることもなく、きちんと「音楽」を踏まえている事が一番ですが、ちゃんとオーケストレーションを施していると思えば、複雑なものを避けて簡潔明快なものを目指していますし、いかにもシンセサイザーという音色を駆使しているかと思えば、管楽器などのシミュレーションによる音色も用いそれをいかにも効果的に配している点など、相当の奥行きを感じさせます。何よりも音楽作品としてのツボをきちんと押さえていて期待通りの効果を上げている事が大きく評価出来ます。変に理屈を並べるよりもまず音楽として楽しめる事が重要だという姿勢に徹していると思います。うっかり書くと反論がすごいことになる可能性がありますが、丁度同じ年に発表されたクリアライト・シンフォニーのファースト・アルバムと比べると、圧倒的大差でシナジーの方が優れていると感じています。

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コメント

エドガーフローゼがなくなって当時の電子音楽が気になってる所ラリーファストを思い出しこちらに来ました。タンジェリンもクラフトワークなんかと比較してもっと評価されいいかと思ってますが、ラリーファストもそうですね。かなり先駆的だったんですね。ティムブレイクなんかも気になって視聴していました。貴重な情報ありがとうございます。

投稿: 白濱雅也 | 2015/03/06 21:39

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