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2013/08/28

One Size Fits All / Frank Zappa & The Mothers of Invention

Fz19フランク・ザッパにとって、グループ名義ソロ名義を区別しないで数えると、通算19枚目、1975年に発表された作品です。ザッパの最高傑作がどのアルバムなのか、という事を決めるのは、極めて困難な作業なのですが、その有力な候補の1枚であるのは確かだと思います。実際、ある雑誌のその手のアンケートでも、「フリークアウト」、「アンクル・ミート」と共にベスト3に入っていた事を記憶しています。このアルバムの大きな特徴は、この1枚にザッパの全てが詰め込まれている事に尽きると思います。

「全て」という表現は、少々無責任な感じもいたしますが、やはり「全て」と書くのが一番しっくりいたします。順に挙げてみましょう。

まず第一に、バンド・アンサンブルが絶好調な事です。とにかくドラムのチェスター・トンプソン、ベースのトム・ファウラー、キーボードのジョージ・デューク、そして70年代後半から80年代にかけてのザッパ・サウンドの最大のキー・パーソンである、ヴィブラフォンとシロフォンを操るルース・アンダーウッドが揃う演奏陣は鉄壁としか言いようがありません。ベースのトムが怪我のために1曲だけ代役を立てているというちょっとした問題がありますが、代役のジェームス・ユーマンという人が、これまた良い味を出していますので、全く問題はありません。

そして、その鉄壁な演奏陣が揃った事による副産物なのかも知れませんが、フランク・ザッパのギターを他のどのアルバムよりも堪能できるという事があります。ザッパという人はギタリストとして十分な定評はあるのですが、その実力がわかりにくいという部分がありました。作曲家として複雑すぎる構成の曲を作ってしまうため、バンドのメンバーをリードする意味でどうしてもメロディやリフを演奏する事が多く、アレンジの中に埋没してしまい勝ちという潜在的な問題があったと言う事です。ところが、このアルバムでは、ザッパ自身がメロディを一生懸命弾いたりする必要の無いだけの実力者のメンバーが揃っているわけで、勢いアドリブソロや仕掛けの部分に力を入れて思う存分弾けたということだと思います。ザッパのギターを聴きたいのならば、まずこのアルバムから、と断言しても良いと思います。

ザッパは以前から、ライプやスタジオ録音の異なるテイクを編集で繋いでしまって1曲を仕立て上げるという手法を用いていましたが、そのノウハウが完成したのが、このアルバムなのではないかと思います。これには異論がある人もいらっしゃると思いますが、編集の作業のおかげで、曲の展開を劇的でダイナミックなものにしている事に成功していると思います。

ボーカル・アンサンブルが半端でないのも目に付きます。もともとリード・ヴォーカルを担当していたナポレオン・マーフィー・ブロックも大活躍しているのですが、このアルバム以前も以後もヴォーカリストというイメージのほとんど無いジョージ・デュークにも重要なパートを歌わせ、さらにゲストとしてジョニー・”ギター”・ワトソンも参加していて、おまけに、ザッパ自身のスケベ親父丸出し(どうもキャラを演じているようにしか見えませんが)のヴォーカルも絡んで、単にリード・ヴォーカルとバック・コーラスなんて扱いではなく、4人のリード・ヴォーカリストによるドラマ構成のような形で進む様は、見事としか言いようがありません。

そして、独特の詩の世界観が全開です。独特というのは、ザッパの場合ははっきりしていて、卑猥と言うか、エロいというか、まあそういう事です。それを間接的比喩も直接的表現もナンのその、その両方を駆使して、怒涛の如く連発する訳ですから、それを楽しみに(?)している熱狂的ファンに取ってはたまらないものがあるでしょう。

ジャケットにも描かれている「ソファ」は主要な曲のタイトルでもあります。ソファが何でエロいの?なんて疑問も出るかも知れませんが、これがサッパにかかるととんでもない事になるのですね。ザッパ・ファンの中には、かなりのパーセンテージで江戸川乱歩ファンがいるのではないかと想像していますが、その人たちは間違いなく乱歩の官能ミステリー小説の傑作「人間椅子」を思い出すでしょう。エロさ!という意味では全く瓜二つなのです。

おあとがよろしいようで・・

(追記)

この記事を書いている最中、ジョージ・デューク死去の報が流れました。偶然のはずなのですが、ただの偶然では無いような気にさせられてしまいました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

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