« Spooky Tooth に光りを!(ソロ編) / Human Love / Gary Wtight | トップページ | A Tag in the Ocean / Nektar »

2014/10/29

Invisible Men / The Anthony Phillips Band

Aphillips8アンソニー・フィリップスが、アンソニー・フィリップス・バンドという名義で、1983年に発表したアルバムです。一連のアンソニーの作品の中では、最もポップス寄りの作品で、問題作と言って良いでしょう。この作品が発表された頃には、プライヴェート・シリーズが始まっていますので、そのを除くと5枚目、合わせて数えますと8枚目のアルバムという事になります。ポップス寄りと書きましたが、全曲が歌入りで(ボーナストラックを除く)、しかもアンソニー自身が歌っているという形は初めてと言って良いでしょう。

こういうアルバムが登場したのは、プライヴェートのシリーズが始まり、「そんなものばかり作るな!」という、レコード会社側からのプレッシャーがあった事は確かでしょう。そんな状況で作り、しかも結果が爆発的に売れたわけでもないので、本人自身は失敗作と判断しているようです。しかし、純粋にアルバムの出来を見ると、大傑作と呼んで良いのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか?

バンド名義のアルバムは後にも先にもこの1枚だけだと思います。クレジットを見ますと、15人ほどの名前が記載されています。しかし、バンドとして考えると、アンソニーとリチャード・スコットという人物の2人組で、後の13人はゲスト・プレイヤーと判断するのが正しいようです。

アンソニーは、ギター、ベース、キーボード、ヴォーカル、パーカッションを担当していて、パートナーのリチャード・スコットは、ドラムマシーン、ヴォーカル、サウンドエフェクトを担当しています。ゲストの13人の中には、ドラム奏者とベース奏者が入っていますが、実際の生のドラムが出てくるのは、全12曲中(ボーナストラックを含めれば全15曲)4曲のみですし、そのうちの3曲はドラムマシーンを併用しているように聞こえますので、実質2人だけでほとんどの部分を演奏している事になります。むしろ、ゲストの中で目を引くのは、サックスやフリューゲルホルンなどの6人の管楽器奏者とパーカッション系のプレイヤーで、うっかりするとテクノ・ポップと呼ばれそうなサウンドに絶妙のアクセントを与えています。

テクノ・ポップと言ってしまうとかなり違和感があると思いますが、ポイントはドラムマシーンで、ローランド808を使用しているとクレジットに明記されています。この機種は使用者が自分でリズムのプログラミングが出来るという意味での、ほぼ最初の機種として一世を風靡したマシーンで、80年代初期の頃の多くのテクノ系のアーティストでは多用されていましたし、さらに当時のジェネシスやフィル・コリンズのソロで使われていた事で有名で、その当時の時代のサウンドとして認識されていると思います。音色的にはそれ以前にあったいわゆるリズム・ボクッスの音を継承していて、いかにも機械音という感じ、あえて言えばチープな音なのですが、その当時はそれが逆に受けていたという意味もあります。

という事で、アンソニーの他の作品と比べて明確に違うのは、このリズムの部分です。実際、1曲目を聞き始めた瞬間、カリプソと呼べそうな軽快なリズムに雰囲気を盛り上げるソプラノ・サックスのフレーズが絡んできて、意表を突かれます。2曲目に至っては、リズム自体はディスコ・ビートを用いていて、さらにピッコロで(曲名は分かりませんが)アニメ「ポパイ」で耳馴染みのフレーズの引用が出てきて、かなり面食らわされます。しかし、落ち着いてよく聞いてみますと、ほんわかしたヴォーカルや、アルペジォを基調とした伸びやかなギターのバッキングなどは、良く知っているアンソニーそのままですので、そのちょっとしたミスマッチぶりが、逆にとても痛快なものに感じてしまいます。

何と言っても、曲自体の出来は素晴らしいです。"I Want Your Heart"という曲のフレーズの一部が、ブロンディの"Sunday Girl"にそっくりなんていうご愛嬌もあるのですが、上質で枠をはみ出してしまったテクノ・ポップ、もしくはテクノ風の味付けをしたポップス・アルバムとして十分以上に楽しめる作品に仕上がっています。プログレではない!!・・ですが。

|

« Spooky Tooth に光りを!(ソロ編) / Human Love / Gary Wtight | トップページ | A Tag in the Ocean / Nektar »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98169/60457976

この記事へのトラックバック一覧です: Invisible Men / The Anthony Phillips Band:

« Spooky Tooth に光りを!(ソロ編) / Human Love / Gary Wtight | トップページ | A Tag in the Ocean / Nektar »