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04/26/2005

鏡の国のアリス(8)

さて、ここまで来ればラストスパートですね。歌の作曲については、あまりにも締切りまでの期間が無くて、悲鳴を上げた人もいたようですが、とにかく、音は揃いました。それをテープに収めたものを関係者全員に配り、それぞれの役割のイメージを膨らませてもらいました。

まだ触れていませんでしたが、OTOMIL-2以後、OTOMIL-3が作られました。これは、コンセプトが全く異なったもので、レーザー光線を遮ると、それを合図に音と映像が反応するというもので、舞台上にレーザーエリアを設定し、そこへ演技者が入ると、その動きに従って機器が反応するという、いかにも舞台向けのシステムです。これは、すごい効果があったものなのですが、聴衆がどの程度認識していたかは疑問です。演技と音と映像の動きがあまりにもピタリと合っていたのですが(実際、そうなるように作ってあるので、当然の事なんです)、大変なリハーサルを重ねて、ピタリと合わせていたように思った人が多かったようです。

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04/22/2005

鏡の国のアリス(7)

いよいよ、本番に向けての調整に入りました。前衛舞踏家の五井輝氏は、森本氏とは以前から面識があり、森本氏は準備が整った段階で五井氏に声をかける事は決めていたようでした。前衛パフォーマー小野榮子氏とも「今度何かやりましょう」というような話はしてあったらしいです。アリス役として、舞台俳優の原サチコ氏(この時は若手でしたので「氏」と書くのは違和感がありますが、ここでは統一します)を見出した時に、全体的な骨格が決まったはずです。この辺の人選関係の活動につきましては、ほとんど森本氏が1人で担当していましたので、詳しい事はよくわかりません。こちらの立場で言えば、「こう決まったよ」という事を知らされ、台本を見せられたという事です。

森本氏がいつの段階から台本を考えていたのかは今となってはよくわかりませんが、ある日突然("LEN"のコンサートが終わって暫くしてからです)「こんな感じだよ」と言ってほとんど仕上がっているものをポンと見せられました。この辺につきましては、実は最近本人に聞いてみようとしたのですが、そんな細かい事以前に、大きな出来事もほとんど覚えていないようでしたので、質問する事を断念いたしました。こちらとしてはCDを作る都合上、ライナーにいろいろな情報を載せた方が良いに決まっているので、そのリサーチのつもりだったんですが仕方がありません。どんな台本だったかは、前にも少し書きましたので、重複は避けますが、全部で24シーン(その後の改定で25に増えました)、曲数にして29曲、公演時間としては100分近いというかなりのものでした。29曲の中には、即興のものもありますので、それを除いた25曲を5人で分担する事になりました。「どの曲をやりたいですか?」という打診があった記憶があります。言われた曲を言われたまま作曲しましたので、「どれでもいいので任せます」と答えたはずです。

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04/19/2005

鏡の国のアリス(6)

そのコンサートは、"LEN"シリーズの第4回という形で、シンセサイザーをメインに使う事を打ち出したコンサートでした。コンサートは2日のシリーズで、1日目のPart1は、「MIDI現代音楽の波」と題され、1989年5月1日(月)バリオホールで、2日目Part2は、「MIDI応用研究」というタイトルで、5月14日(日)ビデオギャラリーSCANという場所で開催されました。Part1では、私は、「Resolution "分解"(ベースギターシンセサイザーのために)」という作品を発表し、Part2ではコラボレーション・ワーク「FOSTM」という作品(?)に参加(?)いたしました。この(?)について説明しないと、何の事かわからないでしょうが、この作品はメンバー5人がバラバラに即興演奏をしたものを、後で重ね合わせるという、軽いのりの曲で、誰が何番目にどの音色を使うかなどをクジ引きで決めるなんてお遊び精神が満載でした。ついでに書いておきますと、1番クジを引いた私が、「始めるけど、いいですか~」と言われ、「あっ、始めていいよ」と答えながら、「ねえ、この音色は初めから出ちゃつまんないよねえ、そう思わない?」なんて、最前列の観客と雑談していて、しばらくしてから「そろそろかなあ」なんて言いながら、キーボードに向かったのが大受けしましたね(ヤッタネ!)。

さて、このコンサートで5人目の作曲家、谷川賢作氏が登場いたしました。谷川氏は、詩人の谷川俊太郎氏を父に持つという人で、本人が好むと好まざるとに関わらず、どうしてもそういう紹介のされ方をしてしまいます。早い話、初めてその名を森本氏から聞いたときの、第一声が「谷川俊太郎って知ってるよね・・・・・」だった訳で、もうしょうがないですね。
この作曲家の谷川氏は、森本氏と柴田氏(前述)の考案したOTOMIL-1とは別個に、シンセサイザーと映像のリアルタイムのドッキングにチャレンジしたパフォーマンス活動をしていて、その繋がりで森本氏と意気投合して参加してきたものと思います。

このコンサートは、大変に成果のあるものだったと思います。角氏、沖田氏の2人は、手探りだったシンセサイザーによる作曲を、コンサートを経験する事で自分のものにする事が出来たはずです(実際、沖田氏については、他の人よりもお互いの拠点が近いという理由で、私が全面的にサポート役にまわりましたので、始めの頃の試行錯誤の段階から、形が出来上がるまでのプロセスを間近に見ていた訳です)。そして、もう1つ重大な事は、Part2で、OTOMIL-2が披露された事です。これは、OTOMIL-1のシステムを利用しながら、グラフィック関係を格段に強化したもので、それによって、単なる実験プログラムから、見て楽しむというエンターテイメントに変貌を遂げた事になります。鍵盤を押すと、発音と同時に立体感あふれる球形が出現するプログラムや、画面全体の色が変化するプログラムは、観客の歓声を誘っていました。

これで、「アリス」への準備は、新たな局面に向かう事になりました。

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04/18/2005

鏡の国のアリス(5)

さて、「アリス」の企画の最初の段階は1978年の春頃だったと思います。森本氏が私とほぼ同時期に声を掛けたのが、実は作曲家ではなくて、その当時ビデオ・アートの分野で活躍していた、前衛映像作家の土佐尚子氏、そして、ご主人のコンピューター・プログラマー柴田良二氏の2人でした。柴田氏と森本氏がどういう話し合いをしていたのか私はあまり知らなかったのですが、柴田氏がシンセサイザーのmidi情報にリアルタイムに反応するグラフィック・アニメーションのツール(森本氏によりOTOMIL-1と名付けられました)を開発しました。これは、現在のコンピューターを用いれば、ちょっとプログラムをいじれる人ならば簡単に出来てしまうものなのですが、その当時のコンピューターのスペックを考えると、当時の最先端の技術を駆使した、技術的にも大変な成果だったと思います。その年の暮れには、その発表を兼ねた実験コンサートが開催され、私も出演いたしました。

その後、「アリス」に向けた企画はなかなか動きませんでした。いろいろ問題が出ていたのだと思います。これは私の想像なのですが、1つは角氏、沖田氏の2人はシンセサイザーを始めたばかりで心もとなかった点。1つは、作曲家としての強力なメンバーが欲しかったけれどなかなか見つからなかった点。1つはOTOMIL-1が、まだ予定していた程の十分な成果を上げていなかった点。1つは、アリス役の出演者探しが難航していた点。他にもあるでしょうが、このあたりが主な問題だったと思います。

そうこうしている内に、森本氏から連絡が入りました。「アリス」の企画は後にして、別なコンサートをやろうという事でした。要は、「アリス」に至る1つの段階として、シンセサイザーにスポットを当てたコンサートをやろうという考え方だったようです。

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04/15/2005

鏡の国のアリス(4)

作曲の担当は前に書いたように5人です。その中で、森本浩正氏が中心になって企画を練っていました。彼は、芸大に入学する前、受験時代からの仲間だった、という付き合いの古い友人です。彼の場合は、作曲の実力も十分あるのですが、それ以上にコンサートの企画・実行する能力により優れた才能を持っていました。卒業後、いろいろな企画を発案、遂行し、同時に人脈も広げていったわけです。その中で、ごく普通の形の現代音楽コンサートシリーズ「麒麟」というのが、正確にはわかりませんが十数回開催されました。私はその中で、「麒麟 作品展No.13 自作自演考」とタイトルされたコンサートに出演しました。そのコンサートで私が作曲・演奏したのは、「CHANGE HERE,AFTERWARDS-」という、ちょっとフュージョン音楽の要素も取り入れた曲で、友人のギタリスト野呂孝司氏と2人で演奏したのですが、シーケンサーも併用していました。この「麒麟」シリーズは、それだけの回数開催されたという実績が評価されているのでしょう、日本現代音楽史の年鑑にきちんと記録が残っています。さらに、もっとテーマ性を重視した”Len”というシリーズ、ヴィジュアルなアートと連携させた「彩色音楽展」というシリーズも企画・運営していました。この時期の彼の活躍は超人的にさえ思えます。

この「鏡の国のアリス」の企画を彼が思いついた時、最初の段階から、シンセサイザーによる音楽と考えていたようで、「麒麟」や”Len”のシリーズに参加していた作曲家で、シンセサイザー等に興味を示す人物を物色していたようです。私は、在学中からシンセサイザーに傾倒していましたので、彼の中ではこの企画では最初に声をかける人間だったようです。おかげで、かなり初期の試行錯誤の段階からお付き合いさせていただく事になりました。角篤紀氏と沖田大介氏の2人は「麒麟」等のコンサートに(私とは別な機会にですが)参加していた人物で、森本氏と「シンセサイザーも面白いね」等と話していたようです。この2人にも声をかける事になり(森本氏は律儀にも私に対して「この2人に声を掛けても良いか」と聞いてきましたね。私もこの2人の作品を聞いた事はありましたが、直接の知り合いではなかったので、つまり全然悪意は持っていませんので、即「OK」です)、森本氏はどう話したのか、この2人にシンセサイザーを買わせてしまいました(ヤルナア!)。という事は、この2人に関してはシンセサイザーに興味はあっても実際にいじるのはこれからという意味じゃないですか!。前途多難。

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04/14/2005

鏡の国のアリス(3)

台本は、ちょっと変わったものでした。セリフは無く、どういうシーンかという説明が書かれていて、そのシーンでは、音楽はどういうもので、ビデオ画面はどうで、演技者はなにをして、という事が書かれています。言い忘れるところでしたが、舞台にはビデオのモニターが並びビデオ・アートとしての一面も取り入れていました。それが音楽のMナンバー順に並んでいます。という事は、演技者のパフォーマンスはパントマイムが主となります。音楽が鳴っているのですから、現代舞踏が一番近いですね。それとは別に歌があるわけですが、歌のテキストは前にも書いたように谷川俊太郎氏の詩「アリス」で、これは「沢渡朔写真集『少女アリス』のために」という副題がついているものです。ついでに言いますと、沢渡朔氏はその後ヌード写真集などでけっこう有名になった写真家ですが(もっとついでに言いますと、インリン、大向美智子、井上貴子など知っている人は「おっ!」というような写真集を出しています)、この「少女アリス」はそういうものではなく、合成などのテクニックも使いながら幻想的な写真を制作したアートな写真集です。さて、著作権法で問題にならない程度に詩の一部を引用しますと、

もしも誰かが私なら私は私じゃありません
けれど私が私なら誰も私じゃないでしょう

  谷川俊太郎「アリスI」より

という感じです。この時点で原作とは一線を画していますね。という事で、舞台も未来という設定にし、原作に無いサタンというキャラクターも登場させるなど、小細工(ある意味では)を労しています。

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04/13/2005

鏡の国のアリス(2)

そもそも、この作品の最初のきっかけは、友人である作曲家森本浩正氏の企画・構成によるものです。作曲家が何人かで1つのコンサートを開催するという形は比較的あることなのですが、それを1つの舞台作品としてまとめてしまおうという形になると、他にはなかなか見当たらないものとなります。森本氏はそれを実現すべくかなり精力的に動いていましたが、それでも最初の発案から実際のコンサートまでに2年はかかっていました。

集まったメンバーは、作曲家の角篤紀氏、谷川賢作氏、沖田大介氏。作曲家は合計5人という事になります。演技者として、舞台俳優の原サチコ氏、前衛舞踏家五井輝氏、前衛パフォーマー小野榮子氏、歌手の師尾朋子氏。他にも映像作家、コンピュータープログラマー、音響デザイナーも参加し、又、アシスタントも多数という事で、かなり大掛かりなイベントになりました。脚本は森本氏がほぼ一人で脱稿しました。原作はもちろん「鏡の国のアリス」なのですが、かなりオリジナルなものに改変されています。また、その作業を進めるにあたって、歌の曲も挿入しようという話になり、谷川氏の父君の谷川俊太郎氏の詩を使う事になりました。実際の作曲については、脚本を元に森本氏が5人の分担を決定し、5人はそれぞれ手持ちのシンセサイザー等を用いて制作しました。その5人分のデータを1つのシステムに組み上げる作業を、私が全面的に引き受けました。その時のデータ類やセッティング表などが一揃い手元に残っていましたので、今回のCD化の作業も進める事ができました。

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鏡の国のアリス(1)

いきなり「鏡の国のアリス」では、かなり怪しい(妖しい!)ですね(笑)。

でも、私の作品一覧を見ていただけますと、「鏡の国のアリス(1990)」という曲があります。そして注釈として次のように書いてあります。

この作品は、音楽、歌、演劇、舞踏、ビデオアート、CG他様々なジャンルのアートを融合させた舞台作品として企画されたイベントのための音楽で、音楽としても5人の作曲家が分担して競作する形となっていた。現在、他の4人の承諾を得て、純粋な音楽作品として、再構成し、CD化を準備中。

そう、そのCD化という作業に、昨年後半から取り掛かっています。正確に言えば、長く中断していたものを再開したという事になります。現在、ラフ・ミックスされたものが出来ていて、私のカー・ステレオでは何時でも鳴らせるようにセットされています。音に関しては、かなりの部分が仕上がっている事になります。しかし、ここでまた中断しかかっています。最大の理由はヴォーカルの録音の目処が立っていない事。この作品にはヴォーカルナンバーが6曲(正確に言えば1曲は後から加えたもので、初演時のオリジナル・ヴァージョンでは5曲)ありまして、その録音だけが残っているわけです。誰か歌ってくれる人はいませんかねえ?ただ、曲としてはかなり難しいと思います。

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