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10/25/2005

電子音楽な日々(8)

日時の記憶の無いある日の昼下がり、録音機材を抱えて、さっそうと繰り出しました。ここで録音機材について説明すべき、という事は重々承知しております。・・・が、覚えていないんですよね。情けない事に・・。ご存知の方もいるはずですが、外国(米?独?)のメーカー製の、ポータブルのオープン・テープ用の録音機で、小型ながらプロ用としての十分のスペックを誇っていました。値段も7桁に届いていたはずです。マイクも又覚えていないんですが、野外録音用の集音の利くタイプと、ごく普通のダイナミック型とを2つ携えていたと思います。メーカーはソニーだったかも知れませんが、シュアーあたりかも知れません。学校にはノイマンもありましたが、まさかそれは持ち出さないでしょう。うっかりぶつけて壊して、「ハイ!○百万円」なんて世界はちょっと怖いですからね。

最初は、手始めに大学の中を回ってみました。ところが、これはあまり良ろしくないのですね。少なくとも音楽学部内は。ご存知の方も多いことでしょうが、音楽学部に足を踏み入れると、あちらこちらからいろいろな音が聞こえてきます。多くが、誰かが何かを練習している音なのですが、複数の楽器音やら歌声やらが雑踏のごとく、ワーッと押し寄せて来るわけで、中には何の曲のどの部分か、が明確に判ってしまうものがちりばめられていて、とてもじゃないですがミュージック・コンクレートの素材としては不適切なものばかりです。

音楽学部は、早々に退散して、美術学部に移りました。ここで、大浦食堂(学食です)の中に入り録音テープを回しました。これは、私の作品のメインの素材の1つになりました。しかし、他に何かあるかと言うと、こちらは大体において静かなのですね。鳥の声を狙うなんて事もあるでしょうし、上野動物園からはいろいろな鳴き声が聞こえてきていますが、それは後で、という事になりました。

その後、先ず京成電鉄の上野公園駅に向かいました。この駅は、その後廃止されましたのでご存じない方もいらっしゃると思います。芸大の音楽学部と美術学部の敷地の端の所にある交差点の向かいに入り口の階段があり、つまり地下駅でした。今でも、その入り口部分のシャッターが下りた形で残っているのではないかと思います。かなり古い造りで、風情はありますが、正体不明に見えそうです。ここは、人の乗降のほとんど無い駅ですし、階段部分は石造りで反響がすごいので、聞こえてくる音をいろいろ録音しただけでなく、缶を投げたりとか、紙を破ったりとか、わざと走り回ったりとか、いろいろ音を出して録音しました。もちろん電車の通過する音なんかは、素材としては十分の迫力があります。その後、たまに止まる各駅停車に乗り込み日暮里駅まで、そしてJR(民営化前なので国電と書くべきなんですが・・・)に乗り換え、駅の雑踏、構内アナウンス、警笛、今は懐かしい改札のハサミの音なんかを録音しました。その後は、上野駅に出て、戻ってきました。動物園に寄ったかどうかの記憶がありません。寄ったかも知れませんが、私の作品にはその音は使用していません。戻った後は、そのテープを3本ダビングし、各自の素材テープとして1本ずつ確保いたしました。

その後は各自の作業です。私は、夏休み中、週3回くらいは通い、製作に没頭いたしました。ミュージック・コンクレートの正道からは外れるかも知れませんが、ムーグ・シンセサイザー(おそらくムーグIII)のモジュールのいくつかをエフェクター感覚で使用いたしました。こうして出来上がった作品が"Music from the Wood"というタイトルの作品です。この作品は後に「ミュージック・コンクレートによるファンタジー」と改題いたしました。作品の詳細につきましては別に書きます。この作品を含んだ「電子音楽コンサート」は、その年の芸術祭で、無事開催されました。

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