« 電子音楽な日々(10) | Main | 電子音楽な日々(12) »

01/14/2006

電子音楽な日々(11)

その年の夏休みは、かなり学校に通いました。前年に引き続いて芸術祭に電子音楽のコンサートをやる事になって、そこで発表する作品の製作に没頭いたしました。芸術祭に参加する事は、全く既定の方針という事で、みんなそのつもりでいたと思います。少なくとも、「やろうかどうしようか」と相談した覚えはありません。

さて、その夏に製作した作品が「ピアノと電子音による小協奏曲」という曲です。ピアノの録音自体は、春頃にやっていました。その頃から曲のコンセプトは決まっていたと思います。芸大の5階の録音室には、数台のグランドピアノがそれこそ無造作にころがっていました。その中の安っぽい1台などは、調律練習用とか実験用とか称して、調律も勝手にいじって良し、プリペアード・ピアノもOKという状態でした。このピアノは、誰かが研究用に純正率に調律したら、その次に来た人が「音が狂っている」と言って平均率に直してしまった、という逸話があるそうです。

そんな中に混じって、スタインウェイのセミ・コンサート・ピアノがころがっているのですから、驚きます。それを使わない手は無いという事で、時間の余裕のある日を見計らって、マイクのセッティングをし、「録音中」のランプのスイッチを入れ、10号のスコッチの新しいテープをマスター・レコーダーにセットし、録音ボタンを押して、おもむろにピアノに向かい、思い付くままに即興演奏をしました。ついでに言うならば、新しいテープは、必要な人が自由に使えるようになっていました。ただし、録音を頻繁に繰り返す作業には、使用済みテープの山が(誇張ではなく100本はゆうにありました)あり、そちらを使うという暗黙のルールになっていました。この録音は、もちろん最初にボリュームの調整をする時に何度か試し録りをしていますが、「よし!本番」となってからは、そのまま一発録りだったと記憶しています。

録音の第一段階はそれでOKです。ところが、第二段階になって、構想を固めるにあたって手間取りました。話は簡単な事で、ピアノが即興演奏なので予期しないような部分があったり、覚えていない部分があったりで、聞き直す必要があったのですが、1時間を超えるテープを納得がいくまで聞き込むのにやたらに時間がかかってしまった訳です。で、春に最初の録音をやっていながら、次の作業が夏休みになってしまった事になります。

夏休みは、主に第6ホールの調整室に通いました。当時は調整室に最高級のマスター・レコーダーがあり、ブックラーのシンセサイザー(詳しい型番は不明です)が置かれていました。そこに、製作用に4チャンネルのマルチ・レコーダーを持ち込み、作業に没頭しました。ブックラーのシンセサイザーは、鍵盤装置が無く、代わりにタッチボード、リボン・コントローラー、アナログ・シーケンサー等が使える型でした。その方が、構想に合致していたと思っています。そして、30分を超える大作が完成いたしました。曲の内容の詳細については、別項で書こうと思っています。

以下は、その期間中のちょっとしたエピソードですが、当時作曲科で教鞭を取られていた松村禎三氏が私と同じように録音室に通って来ていました。自身の作曲(もちろん五線紙上の作曲です)をするのに、静かに集中できる環境が欲しかったとの事でした。録音室内は、文字通り全く雑音に悩まされる事の無い場所である事は、言うまでもありません。

|

« 電子音楽な日々(10) | Main | 電子音楽な日々(12) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98169/7475508

Listed below are links to weblogs that reference 電子音楽な日々(11):

« 電子音楽な日々(10) | Main | 電子音楽な日々(12) »