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11/14/2016

大川義行氏の想い出(6)

出演者のレッスンを付けている時、大川さんが突然「面白い子が1人いる」と言い始めました。トモちゃんという小学生で、トボけた味を持った3枚目キャラなのに利発で感が良いという、この時の公演にはまさにうってつけの人材でした。この時の大川さんの嬉しそうな様子は、鮮明に記憶に残っています。察するに「駒が揃った!」という事に間違いないでしょう。この時点で大川さんの頭には全体の構造が見えていたように思います。

別の人が書いた最初の台本について「わからないわからない」と繰り返し書きましたが、当時の私には理解できなかったという意味で、今は多少わかった部分はあります。要するに千葉市を流れる川を取り上げ、それぞれの川に纏わる歴史的なエピソードをオムニバス形式で綴ろうとしたものです。例えば、更級日記に出てくる河岸での別れのシーン、源頼朝が一時敗北し、千葉で再起を図るべく千葉常胤と面会するシーン、などです。その最初の台本の最大の問題点は観客にわかるような説明がほとんどない事です。源頼朝は説明がなくても「頼朝公」の一言で何となく状況がわかりますが、相手の千葉常胤がいきなり出てきても誰だかすぐにはわからないでしょう。セリフで「常胤様!」と言っても、わかる人はほとんどいないと思います。

その点、小学生のトモちゃんが出てきて「あんた、だ~れ~?」と一言発すれば、「な、なにを・・・こちらにいらっしゃるお方は・・・・恐れ多くも・・・・」と、ずらずらとセリフが続けられ、自然に聴衆にも状況の説明になるでしょう。さらに、現代の小学生トモちゃんが、どらえもんのタイムマシンでその時代に飛ぶという設定にすれば効果抜群です。まあ、どらえもんは使えませんので(つまり、どらえもんを登場させるにはそれ相応の手続きが必要で、そんな手間をかけている時間の余裕はありません)、大川さんが登場させたのは飯村さん演じる「タイム魔人」という怪人物です。魔人が杖を一振りすれば、あっという間に時代を超えて・・。ベタです。絵に描いたようなベタです。しかし、こういう台本を観客に納得させるにはベタに勝るものはありません。さらに、もう一人のゲスト斉藤さんは、おてんばなトモちゃんに振り回されてアタフタする、お人好しのお兄さん役です。このお兄さんはトモちゃんにあれこれ訊かれて、自信満々に応えていたつもりが、途中から「なんでこうなるの~?」と頭を抱えるようなキャラ設定です、これで役者は揃いました。あとは台本次第です。

実はこの後の事は時系列に沿った記憶が無いのです。次々に台本が郵送されてきて、片っ端から曲を付けてという事です。曲は歌の曲だけで8曲。ダンスのシーンもありますし、セリフのバックのBGMもあり、全部で25曲を1~2ヶ月くらいで作りました。実際の本番までは、さらに微調整(つまりこの部分を少し長くとか、ここから曲調が変わるとかの調整です)が続き、ほとんどこればかりかかりきりになりました。前の記事で、シンセサイザーのオーケストラサウンドを使ったと書きましたが、もう1つ日本音楽のセットを組んでそれも使いました。篳篥や笙、筝、篠笛、大鼓、小鼓などの音色を組んだものです。拍子木や錫杖の音も使いましたね。

曲そのものや劇の内容については、別に書こうと思っていますので、ここでは詳しくは触れません。いろいろな意味で印象的な部分をさらっと書きますと、まず「タイム魔人」は、当時「ハマの大魔神」佐々木投手が現役で大活躍していた時期で、そのもじりです。大川さんは、このように時間的に余裕が無いような状況では、思い付いたら全部入れてしまおうという考え方で取り組んでいたと思います。陰陽師が登場したり、「丹後5きょうだい」という曲が入ったり・・・これは当然、当時大ヒットした「だんご3きょうだい」のもじりです。大川さんがこんな感じでしたので、私は私でやりたい放題だったと思います。「丹後5きょうだい」はもちろんベタなタンゴ調ですし、はごろも伝説のシーン(こういうシーンも入っていました)のバレエの音楽は複調で書いてしまいましたし、最後のエンディングは誰が聞いても直ぐに判るブルックナー調で盛り上げていますし・・。

公演は大成功だったと思います。結果オーライです。大川さんがいない今、再演というのは難しいかと思いますが、昨年歌の8曲を合唱組曲に編曲して、大川さんに楽譜を見せたところ大喜びして、「劇も再演したいね」と言っていました。2021年が千葉市市制100周年の節目なんですが・・・・

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