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12/15/2016

大川義行氏の想い出(17)

劇団サンブキッズ版のミュージカル「夢人党」は2009年の5月の連休中に上演されました。本番が近づいてきた時期に、打ち合わせ不足でもう1曲分用意する羽目になったのですが、それ以外はだいたい順調に進みました。その新たに用意した曲も、基本的には音楽ではなく、心臓の鼓動の音のような感じの効果音に近いものですが、シンセサイザーで音を作って録音しましたので、曲と言えなくもないという微妙な感じです。

本番は、大変な熱演で充実したものでした。ただ内容がヘヴィーなので、見終わったらぐったりと疲れた事も確かです。この作品は私の作曲した部分が多くないのですが、別な人の作曲したものを全体的に見直しましたので、1人で最初から作曲するよりもはるかに手間がかかっています。その意味で大仕事をした感触が強いのも確かです。

この公演の時は、大川さん自身が重要な役どころ、タワシのおっさんを演じていましたので、あまり話をするタイミングは無かったはずです。実際話をした記憶は無く、大川さんがニコニコと上機嫌だった印象だけが残っているのですが、どうも次の作品についての話を、どこかのタイミングでしたらしいのです。本当かな?と自分でも思うのですが、そういうメモが残っています。

劇団サンブキッズの次年の演目は、「だぶきゃ」ということでした。メモによりますと、サンブキッズの話だけでなく、ミュージカル"Kenji"の再演も考えているという話もあったようですが、それについては具体的な話は無かったようです。「だぶきゃ」は、やはり劇団ルネッサンスの主要な演目の一つですので、今回の「夢人党」と同じように以前の曲を編曲するような取り組みになるのかと思いました。ところが、大川さんは音楽を新たに1から作り直して欲しい、という驚くべき注文を出して来ました。なぜそういう注文を出してきたのか、についてはとうとう聞かないままになってしまいましたので、憶測でしか書きようがありません。

「だぶきゃ」の舞台はとあるミュージカル劇団で、公演に向けて役作りに励む劇団員の心情や葛藤を描いたものです。劇の練習をしているシーンでは他の劇の音楽を転用出来ますし、劇団員は役を演じるのではなく自分自身を演じれば(?)良い事になります。実際にしばらくしてから送られてきた初演時の台本では、全9曲の挿入曲中3曲が「ムービーキッズ」で使われたものと同じ曲になっていました。つまり、「ムービーキッズ」の公演に向けての練習中の出来事を描いた作品という事になります。この設定は、時間に追われた状況で公演に臨まなければならない時にはすこぶる便利なものです。手抜きという言い方は気がさしますが、台本書きや練習に余計な手間をかけずに進める事が出来るという意味で、一種の奥の手だったのだと思います。どうも最初の公演の時にはそういう面について大川さん自身が必要以上に気にしていたような気配があります。それをきちんと仕上げる事を、大川さんが自らに課した宿題と考えていて、やっとその宿題に取り組もう、あるいは取り組めるという気持ちになったのではないか、と推察いたします。以上はあくまでも私の憶測ですし、それが合っているのか間違っているのかを今から検証するのは非常に困難です。

台本が送られて来たのは5月中でしたし、6月には曲作りを始めていました。9曲の挿入曲のうち、最後のフィナーレはテーマの再登場、そしてダンス音楽3曲は実質同じ曲で済む設定ですので、用意するのは歌の曲5曲とダンス音楽1曲という数です。歌の曲のうち3曲は「ムービーキッズ」の挿入曲と同じものだとわかるようになっていますし、ダンス音楽も「ムービーキッズ」のものが転用出来そうですが、この4曲を新しく作曲しようかどうしようかと考えた記憶があります。それは後々考えるとして、歌の曲2曲を先行して進めれば良いだろうという事で作業にかかりました。

ところが1曲目の楽譜書きに取り掛かろうとしたタイミングで問題がおこりました。6月の下旬だったのですが、突然大川さんから作業を止めて欲しいとのメールが舞い込みました。それで、この作品はお蔵入りとなりそのまま日の目を見ない形になりました。楽譜を書くばかりになっていた1曲目はかなり良い出来だったとの自負がありますので、この中断は大変残念な事でした。大川さんからのメールも何だか怒っているような文面でした。この作品が大川さんの宿題だったのではないかと感じたのは、実はこのメールに接したからです。大川さんにとっては、宿題をやり残してしまったという残念な気持ちが私以上に大きかったのではないかと感じたという訳です。大川さんがその後「だぶきゃ」を再演した記録は見当たりませんので、この時以来封印されたままだったのではないかと思います。

それでは、何故そういう話になったのかについてですが、大川さんからのはっきりした説明はその時もそれ以後もありませんでした。以下は、大川さんがほのめかした話に、私の憶測を加えたものですが、どうやら劇団の運営面で意見の食い違いがあり、大川さんが手を引く事になったのではないかと思っています。劇団サンブキッズはその年のうちに劇団サンブステップスと改名し、現在も活動を続けているようです。

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