« 大川義行氏の想い出(14) | Main | 大川義行氏の想い出(16) »

12/11/2016

大川義行氏の想い出(15)

2008年7月頃のある日、大川さんが突然来訪しました。例によって日付等が詳しくわかりませんが、「今日時間ある?たまには飲まない?」なんて感じで電話があったように思います。実はその時の話の内容を記したメモがあり、それが唯一の記録です。大川さんと飲む機会というのはそれなりにあったのですが、1対1で飲んだ事はそれほど多くないですし、あったとしても、たいていの場合は、本番が近くなりどうしても打ち合わせが必要になったタイミングで、それでは飲みながらにしましょうという形になったケースがほとんどです。この時のように、誘いがあり1対1で飲んだのは3回くらいかな、という気がします。もちろん、大川さんが何人かで飲んでいて、私にも声がかかるという形ならば何度もあった記憶があります。

それでは、なぜメモが残っているのかと言えば、実質的には打ち合わせと言えば打ち合わせのようなものだった訳です。内容は次回の劇団サンブキッズの演目の事でした。次回は大川さんの代表作の1つ「夢人島」をやろうと思っているという事でした。大川さんの代表作と言えば、新旧の劇団員たちの意見では「Cカンパニー」(サンブキッズ版では「キッズバンク」)が一番人気なのではないかと思いますが、大川さん本人の思い入れが大きいという意味では「夢人島」なのではないかと思っています。このミュージカルは、もちろん劇団ルネッサンスで何度か取り上げていて、内容が次第に変化しているとの事でしたが、今回劇団サンブキッズで取り上げるにあたって、出来るだけ初演に近い形でやりたい、という思いを聞かされた訳です。つまりこの時は、そういう風にやりたいからよろしく、という意味で誘われたという事ですね。なぜそういう内容の話を持って来たのかは、実際のところはよくわからないとしか言いようがありません。ただ、このよくわからない部分が大川さん本人の思い入れの部分なのではないかとの想像は付きます。この「夢人島」には「タワシのおっさん」という大川さん本人が演じるキャラクターが登場するのですが、この役だけは大川さん自身が自分で演じる事にこだわっていて、他人に任せる事は一度もなかったはずです。この役そのものが、若い頃の大川さんと何か繋がっている、大川さんの原点なのではないかという気がして仕方がありません。

考えてみれば、初演の形でやりたいという大川さんの希望は、その当時ルネッサンスの舞台監督として音楽も取り仕切っていた猪俣先生に対して少し失礼な話にも思いますし、気配りが信条の大川さんにしては少し珍しい言動にも思います。逆に、それだけ大川さん自身の思い入れが強かったのではないかという傍証にもなりそうです。

その日は、かなりいろいろな話をしたはずです。時期的に言って、3月と5月の公演についてはいろいろ話したと思いますし、2作ともですが、特に「八犬伝」は良かったというのが共通の認識で、その話でかなり盛り上がったはずです。将来的にどんなものをやろうか、という展望のような話もいろいろしたと思います。この時かどうかはわかりませんが、私からは坂口安吾の作品を取り上げませんか?という提案をした事があります。文壇では一緒に語られる事の多い坂口安吾と太宰治ですが、私はどういう訳か太宰はイマイチで坂口の信奉者なのですね。ともかく、前述のメモによりますと、「夢人島」の初演の時の音楽を収録したカセットテープと、その当時に印刷製本された台本を渡されたという事です。

その時に渡されたと思われるテープが手元に残っています。歌の曲が7曲にBGMが2曲、BGM1の曲は2テイクあり、全部で10曲分になります。2テイクあるBGMは同じ曲ではあるのですが、後半の展開が全然違っていて後半だけ聞けば違う曲のようにも聞こえるほどです。テープには曲名もその他のデータも何も書かれていませんが、初演の時に使われた音楽を集めて1本のテープにダビングしたものだと思います。

テープで聞ける演奏は、管弦楽器やエレクトーンを含んだバンド演奏のものです。確認出来る範囲で書きますと、ドラム、ベース、ピアノ、エレクトーンにクラリネット、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリンが入る感じです。エレクトーンの奏者がいかにもヤマハ系で、メロディをどんどんヤマハ流即興演奏で変えていってしまうので、歌のメロディが全く聞いて判断出来ません。大川さんには「これでは歌のメロディがわかりません」とメールして、作業に入る前の方針を考える作業に集中しました。

かなり早い時点で決めた事は、このテープの10曲(9曲)は全曲採用するという事です。これは、大川さんの「初演の感じで」という要求に応えるには、その方が良いと判断したからです。私のところにはエレクトーンはありませんが、エレクトーン風の音色のデータは掃いて棄てる程ありますので、それ等から使えそうなものをピックアップしてセットを組んだ状態でスタンバイしていました。大川さんから反応があったのは1ヶ月以上経ってからでした。なぜそんなに時間がかかったのかですが、初演の時の録画を探していてなかなか見つからなかったとの事でした。とにかくビデオテープが届きましたので、見てみて・・・・ビックリいたしました。「腰を抜かしました」と書いた方が、本当に抜かした訳では無くても、意味が伝わりやすいように思います。

一言で表現するならば、メロディがとんでもないという事に尽きます。メロディそのものが良いとか悪いとかの問題ではなく、音域が広すぎてまともに歌うのが極めて困難だという事です。1曲で2オクターブを超えているというのは、非常識極まりない現象で、はっきり言ってプロのオペラ歌手でも、下手をすると喉を傷めると言って嫌がるレベルです。ビデオで見た初演の時のヒロインも喉を傷めているような声になっています。劇団サンブキッズは歌のレベルは発展途上で・・・はっきり言えば劇団ルネッサンスのレベルにはまだ達していませんでしたので、このまま歌わせるのは危険極まりないとしか言いようがありません。さて・・・どうしましょうか?

|

« 大川義行氏の想い出(14) | Main | 大川義行氏の想い出(16) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98169/64597588

Listed below are links to weblogs that reference 大川義行氏の想い出(15):

« 大川義行氏の想い出(14) | Main | 大川義行氏の想い出(16) »