« 大川義行氏の想い出(17) | Main | 大川義行氏の想い出(19) »

12/17/2016

大川義行氏の想い出(18)

2011年の10月になって、突然大川さんから電話がありました。それによりますと、旭市が主催する市民ミュージカルで、以前の作品"Kenji"を再演したいとの事です。ご承知のようにその半年ほど前に東日本大震災があり、旭市でも津波の被害者が出ました。これもすでに書きましたが、"Kenji"は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を原作としたミュージカルです。ストーリーはご存知の方も多いと思いますが、主人公が川で溺れた友人との別れと痛手から立ち直る様を描いたもので、震災復興のための公演に相応しいという話でした。旭市の市民ミュージカルはこの時の公演で第7回となっています。大川さんが過去の6回についてどの程度関わっていたのかはきちんと聞いていませんので良くわかりませんが、少なくとも1~2回は関わっていたことが確認できますし、この第7回の時は全面的に主導する形でした。

電話があった日は、出演希望者を集めた顔合わせが行われた当日だったようで、顔ぶれを見て大丈夫だと確信してから、私のところに電話をしてきたらしいです。この作品は再演で既に曲はありますので、私が断るかも知れないという心配は全くしていなかったみたいですね。前回の「だぶきゃ」の件で私が腹を立てていて、「もう二度とやらない!」と言ったらどうするつもりだったのでしょうか(笑)。もっとも、そんな事で腹を立てるような人間では無い事を見透かされていたようにも思います。

出演希望者は市民公募でしたが、後でわかったのですが、過去に何回も出演していた、ベテランと呼んで良い経験者が多数揃っていました。この点、「ちばの川ものがたり」や「南総里見八犬伝の謎」の時のように未経験者ばかりで困るというような問題は無さそうでした。ベテランと言っても主役を務めた2人は共に高校生だったはずで、恐るべきは大川さんの人材育成術だという事になります。本番は翌年の秋で、約1年かけてじっくりと仕上げるというプロジェクトでした。実は現代音楽の方の作曲で忙しくなっていて、日程がタイトだったら断る可能性もあったのですが、1年がかりでしたら何の問題もありませんので、直ぐに承諾の返事をいたしました。

まず、前回のデータを出してきてチェックいたしました。実は、前回不満ながら妥協していた音色がいくつかありました。具体的には生ピアノ音や生ギター音などのアコースティック系の楽器音と、エレキギターを模した音です。この時ははるかに良い音を手に入れていましたので、その部分を差し替えて再録音する事にいたしました。テストをしてみましたが、以前より数段良いものに仕上がりそうでした。しかし、録音は急がなくても以前使ったテープやCD-Rがありますので、練習に事欠く事はなさそうでした。大川さんも、歌の練習を先行させながら台本をゆっくりまとめるつもりのようでした。「歌の練習を見て下さい」と頼まれて練習場所まで出向いたりもしました。最初のうちはたまにだったのですが、公演が近くなってくると毎週に近い状態になりました。旭市は意外に遠いのですが、車で何往復もした形になります。大川さんを乗せて帰ってくる事も何度かありました。何かの時に「ここまで津波が来たんだよ」というポイントを教えてもらったりもしました。海なんか全く見えない場所で、東北各県のような惨状になっている訳でもなく、言われなければちょっとわからない感じでした。

そんな感じで練習に付き合っていたのですが、振付やダンスの練習用の音楽に「キッズバンク」で作ったBGMを使っていたのが印象に残っています。大川さんは「せっかく面白い曲なんだから使わなければもったいない」なんて言っていましたが、実は「キッズバンク」の時は、シーンに上手く乗らずに外してしまった印象の曲でした。

そうこうしている内に、大川さんから電話があり、オープニングで宮沢賢治作詞作曲の「牧歌」という童謡を使おうかと思うけれど・・・と、相談のような感じの話がありました。私は本心はちょっと驚いたのですが、「いいですよ」と言っておきました。そういうやり取りがあって暫らくしてから、台本の最初の部分が届きました。例によって・・・なのかどうなのか・・・タイトルが"Kenji"ではなく「銀河鉄道に乗って」と変わっていました。まあ、むしろ"Kenji"というタイトルの方が若干ながら違和感がありましたので、これは納得でした。そして、オープニングの部分は前回とは全く違った形になっていました。順を追って書きますと、オープニングの音楽があり・・「心ときめくオーバーチュア」と台本に書かれてしまっています・・「牧歌」を数人の子どもたちが歌い、それから急にアップテンポのダンスが入り、もう一度「牧歌」を全員で歌う、という流れです。この部分は全く新しく制作いたしました。ただ、違和感が無いようにするため、他の曲と同じ音色を用いて、フレーズ的にも共通点があるような感じにいたしました。この「牧歌」が出る部分はエンディングにも使われましたので、その2ヶ所が前回とは異なる形になります。それ以外の部分は前回とほぼ同じです。原作もありますし、大きく変える訳にはいかないでしょう。

本番は2012年10月7日、会場は千葉県東総文化会館大ホールで、満員に近いお客さんが集まり、大盛況でした。1つだけ残念というか心残りだったのは、クライマックスシーンに歌われる「さそり物語」の後半の合唱を、ゴスペル調のフリをつけて盛り上げて欲しいと注文をだしておいたのに、果たされなかった事です。どうもゴスペル調というのが出演者の人たちにはイメージ出来なかったらしく、結果棒立ちで歌う形になってしまいました。変に遠慮せずに振付などにも口を出しておくべきだったと反省しています。

|

« 大川義行氏の想い出(17) | Main | 大川義行氏の想い出(19) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/98169/64629427

Listed below are links to weblogs that reference 大川義行氏の想い出(18):

« 大川義行氏の想い出(17) | Main | 大川義行氏の想い出(19) »