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12/13/2016

大川義行氏の想い出(16)

さて、ミュージカル「夢人島」です。先に書きましたビデオテープと共に台本の最初の部分が送られて来たと思いますが、例のごとく・・・・・と言うのかどうか・・・タイトルが「夢人党」に変わっていました。これも、なぜなのかと言っても、憶測の範囲を出ないのですが、劇団ルネッサンス版の「夢人島」とは違うものだという事を何とか示したかったのではないか、つまりざっくり言って大川さんの思い入れ、という話にしておきたいと思います。

取り敢えず、前の記事で書いたメロディの問題については大川さんに「このままのメロディでは歌うのが大変だと思いますが」とメールしたところ、「問題のあるところは変えても構いません」との返事がありました。つまり、メロディを改変しても良いとの確約を得られた事になります。その後、楽譜制作の開始です。ここまでお膳立てが整えば、方針は決まったようなものです。歌の曲の初演版の7曲はすべて採用し、問題のあるメロディ等は変更し、・・・これはいろいろな方法を取りましたが、とにかく音域が広いので、それを縮める作業が最優先です。メロディそのものを、元の雰囲気は残しながら高い部分は下げて、低い部分は上げたり、転調して低く(高く)なる部分は、転調の前後を上手く処理して別な調に行くようにしたりです。それとは本質的に別の話なのですが、ついでに言葉のイントネーションとメロディの線が全く合っていないのを修正する作業もしました。イントネーションについては、100%合っている必要は無いのですが、合っていない部分が多ければ多いほど言葉の意味を聞き取るのが困難になるのは理の当然で、元の曲では8割方合っていない印象で、少なくとも許容される限度をはるかに超えています。

さて、「ムービーキッズ」で書いたように、1曲ずつ触れておきましょう。1曲目「夢人党のテーマ」は(「党」と書くか「島」と書くかは不問のままにしておきます)、かなりいじっています。通常のイントロの前に幕開けの部分の音楽を新たに追加しました。初演版ではアップテンポの部分は同じメロディを何度も繰り返しているのですが、同じ調で繰り返すのは飽きるという事で、調を何度か変えています。そのおかげでただでさえ音域が広いのに、さらに広がってしまっているのが大問題です。仕方が無いので、調は変えず、1部を別なメロディに変更しましたので、この追加のメロディ部分は私の作曲という事になります。スローな部分も、前半がやけに高くて後半がやけに低いので、前半と後半を違う調にして音域を揃えました。それに伴い、間奏や後奏の部分を繋がりが自然になるように手を加えました。2曲目「この服見てよ」は、前奏で軽快な3+3+2のリズムになっているのに、歌のメロディが3+3+2になっていません。これは直した方が良いと判断しましたので、メロディの細かいリズムが変更になっています。

3曲目「いつの間にか」は、アップテンポの部分はやたらにメロディラインが行ったり来たりしていて、盛り上がっているはずの肝心なところでとんでもなく低い音に下がってしまう、という変なメロディになっています。この低さはアルトやバスの最低音と目されている音で、ソプラノやテノールでは絶対書かない音です。ですので、全体の調を少し上げ、音域が高い音は下げ、ふらふらと低い方へ行ってしまう部分は上げて、という作業をしています。また中間のスローな部分は、メロディそのものはほぼ変えない代わりに、少し低い調へ移調させています。全体の構成はほとんど変えていません。4曲目の「夢人党記念日」は、元から変な調設定になっています。要するに半端な音域で、初演のビデオでは女性陣が低い音域で、男性陣が高い音域で・・・結局同じ音で歌っています。結果として、低すぎて、あるいは高すぎて歌いにくいというのが声から判ってしまいます。これを半オクターブほどずらし、高すぎると思う所は修正しています。曲の展開はそのまま変えていません。

5曲目「どこへゆくの」と6曲目「さびしい日々が」は、5曲目の長々とした後奏をばっさりカットした以外は、曲の雰囲気や伴奏はほとんど初演版のまま変えていません。一方で、メロディラインはほとんど違う形に直しています。イントネーションがあまりにも合っていないのと、いかにも歌いにくいメロディになっているので、変えた方が良いと判断したわけです。この作曲者は、歌いやすいか歌いにくいかという配慮は全くしていません。気付いていないというのが正解でしょう。ヤマハ系(に間違いないと思っています)で作曲の勉強をした人の大欠点がもろに出ています。7曲目「いまはじまるパーティー」は、ほぼ原曲通りです、何ヶ所かメロディを直していますが、気が付かない程度と思います。そして、8曲目として「夢人党のテーマ」が再登場いたしますが、歌が始まるまでのBGMの部分は1曲目とは全く違ったものにし、最後のアップテンポの部分は省略し、その前のスローな曲のまま盛り上がって終わる形になっています。この展開については、なぜこの形にしたのかの記憶が無く、本番の直前になって曲自体を修正して差し替えた記録がありますので、大川さんの指示によるものだったのではないかと思っています。

以上のように、歌の曲に関しては、私の作曲というのとは違っている状態です。感覚としては、作曲の部分が2割くらい、編曲の部分が5割くらい、元々のままの部分が3割くらいという印象でしょうか。メロディ部分はかなり変更していますので、元のままの部分は1割くらいかと思いますが、つまりメロディ以外で残してある部分もけっこうある事になります。

それでは、歌の曲以外についてですが、曲数として数えるのが難しい面がありますが、私が全部作曲したものが5曲(1曲は本番では使いませんでした)、「夢人党のテーマ」のイントロや挿入部分、エンディングの部分、「いまはじまるパーティー」の歌の後メドレーのように繋がるBGM、工事の音などのSEが私が制作した部分になります。工事の音は効果音と思われるかも知れませんが、くい打ちやハンマー、ドリルなどの音、車の音など何種類かの効果音をミュージックコンクレートの手法で組み合わせて作り上げたものですので、実際は作曲と同じようなものになっています。

この中で特に書いておきたいのは、私が勝手に「なんちゃってジャズ」と名付けた3曲です。このミュージカルは、大川さん演じるタワシのおっさんが切り盛りするカフェがメインの舞台になっているのですが、物語の冒頭から「(店内に)ジャズが流れている」というト書きが出てきます。普通に考えれば、スタンダードのジャズナンバーの何かを流すのでしょうし、初演の時はそうしていたのではないかと思いますが、この音楽を作ってしまいました。ジャズは得意な方ではありませんので、ジャズもどき・・名付けて「なんちゃってジャズ」です。1曲はトランペットをフューチャーしたジャズコンボの編成の曲で「ワークソング」に似ています。次の曲はピアノトリオの編成で「ムーンライト・セレナード」に似ています。3曲目はニューオーリンズスタイルの曲で「イースト・セントルイス・トゥードゥル・オー」に似ています。この3曲目は実際には流しませんでしたが、どれも何となく「ニヤリ!」としてしまう出来です。決して出来が良いという意味ではありません。

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